2019(令和元)年度は、ICT(Information and Communication Technology.以下同じ。)について先進的に取り組むT社会福祉法人(T県で障害福祉サービス事業所を経営)を対象に、訪問調査と質問紙調査を基に業務支援システムの導入事例による業務の効率化を考察した。その結果、業務支援システムの導入により、効果が認められた項目は、所属事業・サービス別に異なる特徴があることが明らかとなった。また、自由記述の回答から、システムの入力画面の狭さ、事業所ごとに使用方法が異なる点、事業所間での利用者情報の共有の課題、入力した記録データの検索・分類に関する課題等が抽出された。
2020(令和2)年度は、T県における障害福祉サービス事業所に質問紙調査を実施し、ICT導入の実績とそれに伴う業務効率の意識について考察を行った。結論として、業務支援のためのICTシステムの導入率は、22.7%と低く、職員数が20人未満の事業所では15.2%であるのに対して、職員数が20人以上の事業所では43.3%と事業所の職員数によって導入率に顕著な差が見られた。また、記録業務の電子化が進んでいない実態が浮かび上がった。しかし、ICTシステムの導入をしている事業者では、業務支援システムの導入効果が高く評価されている。また、自由記述データにおける業務支援システムに対する不満点として、システムの導入コストやデータ移行業務の困難さ、システム操作の複雑さ、システムの処理速度の遅さや使用環境の制限等の回答が多く、ICTシステムの導入が進むためには、こうした現場の要望の分析が必要であると考える。