時間的展望(Time Perspective : TP)研究では、過去展望において否定的な出来事を受容したり肯定的に意味づけられたりすることで、TPの様相が肯定的に変化することが示されている。しかし、過去展望に基づく感謝を直接検討した実証研究は少なく、その知見をさらに蓄積する必要のある研究領域と考えられる。
そこで本研究では、過去展望に基づく感謝を示唆する表現として「おかげさま」という感謝に着目して作成尺度の定義づくり行い(研究1)、困難克服過程で受けた支えに対する感謝尺度:Gratitude for Past Support in overcoming difficulty(GPS)を作成し(研究2)、TPに及ぼす影響について質問紙調査を実施した(研究3)。
探索的因子分析の結果、GPSは「他者からの受容に対する感謝」と「新たに気づいた支えに対する感謝」という体験様式が反映された2因子構造が示された。共分散構造分析の結果、GPSは時間的態度のうち、希望・現在充実・過去受容を高めることが示され、その中でも希望への影響が最も強く示された。
今後は質問紙回答に先んじて、過去を想起するワークを用い、感謝の対象者や状況をより考慮したモデルを再検討したい。